Q:
私は川口市在住の34歳の女性です。12歳の息子と7歳の娘と一緒に暮らしています。夫とは離婚しており、毎月送られてくる養育費だけでは生活が苦しいので、近くの製造業の会社でパートとして週4日働いています。
雇用期間は1年の有期雇用ですが、30歳の時に夫と離婚したことを機に勤め始め、今年で4年目になります。昨年の忘年会の場では、その会社の社長から、うちでは期間満了で辞めた人はいないから、安心して働いてほしいと言われました。また、パートで期間満了を理由に辞めた人は今までいないと聞いています。
その会社は、時給も良い方で、同僚とも仲良く仕事ができていたので、今後、正社員になりたいと考えていました。
しかし、先日、社長から、次期の更新はしませんと突然言われてしまいました。先月、息子が高熱を出したので、急に3日ほどお休みをいただいたのが気に入らなかったのかもしれません。
子どもの生活費や学費などが、これからもっとかかるのに、働けなくなったらとても困ります。なんとか、今の会社で働き続けることはできないのでしょうか?
A:
1 雇止めに関する労働契約法上の定め
期間の定めのある雇用契約を、期間満了で終了させて、雇用契約の更新をしないことを「雇止め(やといどめ」といいます。雇止めに関しては、雇止めが制限される2つの場合について、労働法上の定めがあります。
①まず1つ目は、「過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる」場合です。
これは、雇用契約が何度も更新されていて、期間の定めがある契約と言いつつも、実質的には、期間の定めがない契約と変わらないといえる場合のことを言います。
②またもう1つは、「労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる」場合です。
これは、例えば、雇用主が、長期の勤務を期待させるような言動をしていたことや、これまでの会社の実務運用上、期間更新されなかった者がいない等の場合があげられます。
こうした事情がある場合で、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には、雇止めが認められません。その結果、従前と同じ労働条件で、雇用契約の期間が更新されることになります。
なお、こうした定めが適用されるには、労働者側からの契約更新の申し入れが必要になりますので、労働者から更新してほしい言うことが必要になります。
2 本件の結論
それでは、今回のご相談については、どのような結論になるか考えてみましょう。
今回のご相談のケースでは、会社の社長から引き続き勤務してほしいと言われていること、これまで契約を更新してもらえなかった人がいないと思われること等から、「労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」場合にあたると思われます。
あとは、契約を更新しないことについて「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」にあたるかの判断をすることになります。
今回のケースでは、息子さんの病気で3日休んだだけであり、雇止めをする理由が、これしかないのであれば、会社側としては、契約更新を拒むことはできないように思われます。
3 雇止めルールの改正(有期雇用の無期転換)
なお、近時話題になっている有期雇用の無期転換という問題についても少しご説明させていただきます。
これは、有期雇用であっても、通算5年間勤務し、その後、労働者側から雇用を継続したいというという意思表示がされた場合には、有期雇用が無期に変わるという制度です。この制度が適用されるのは、平成25年4月以降の契約になってはじめてこの制度が適用されますので、実際に、有期雇用の無期転換が使えるのは、最も早くても、平成30年4月からになります。
なお、この制度で変わるのは、契約の期間のみであって、労働の内容それ自体には、何ら影響を及ぼさないことには注意してください。
また、使用者側からすれば、この制度の適用を避けるために、かえって、雇用期間が5年に達する前に契約を打ち切る会社が増えるのではないか、との危惧もされています。現実にどうなるかは、今後の状況を見るしかありませんが、これまでお話ししてきた雇止めの話は、今後も問題になるため、有期雇用の無期転換が認められなくても、雇止めの規制により、雇用が継続できる場合もあるかと思います。
実際に争う場合には、専門的な話になりますので、弁護士などの法律専門家にご相談された方がよろしいと思います。
(11月23日放送)