Q:
私は、4年ほど前から駅前の一軒家を借りています。2年の契約期間で、賃料は月額14万円です。
最初の2、3年は問題なく賃料を支払っていたのですが、4か月ほど前に失業してしまったため、今後、契約書どおりの賃料を支払い続けるのは厳しくなりました。
そのような大変な状況なのに、最近、大家さんが、賃料を1万円ほど値上げしたいと申し出て来ました。大家さんにこちらの事情を説明しましたが、こちらも大変だと言われ、とりあってくれません。
何か、賃料を下げられる良い方法はないでしょうか?
また、大家さんとの賃貸借契約書には、賃料減額請求をしないとの条項があります。この条項があると、賃料減額を請求することはできなくなってしまうのでしょうか?
A:
1【賃料増減請求の調停】
まず、1つ目のご質問ですが、賃料を減額させる方法としては、賃料増減請求調停の申立てをすることができます。
賃貸借契約で定めた賃料額が不適当になった場合には、賃貸人(貸主)側からは、賃料増額請求ができます。一方で、賃借人(借主)側からは、賃料減額請求をすることが認められています。
賃料額の変更については、本来であれば、当事者間での交渉で解決すべき問題ですが、往々にして、交渉がまとまらないことが多く、賃料額は当事者の利害が最も対立しやすい一局面であるため、このような制度が設けられています。
なお、賃料の増減の争いについては、法律上、調停前置の定めがあり、まず調停を起こさなければならないことにご注意ください。
仮に調停を起こさないまま、訴訟を提起したとしても、調停を申立てるように促されることになります。
2【賃料増減調停の判断方法】
それでは、賃料増減請求の調停を起こした場合には、どのように判断されるのかご説明します。
具体的には、賃貸建物にかけられる税金等に増減があるか、賃貸建物自体の価値が増減したか、近隣にある類似した賃貸建物の賃料額はいくらか、といった事情を総合的に考慮して判断されることになります。
こうした複数の事情を整理したうえで書面にして主張することは、ご自分ですることも可能ですが、もしご自分でするのが難しいようでしたら、専門家である弁護士にご相談した方がよろしいかもしれません。
3【賃料増減請求権を放棄するとの特約の効力】
2つ目のご質問ですが、契約書に、賃借人側が賃料増減請求権を放棄するとの特約があったとしても、賃貸人から賃料減額請求をすることは妨げられません。
法律上、賃借人の利益を法律上の規制以上に害するような特約はその効力を有しないとされています。
賃料増減請求権については、借地借家法上も賃借人に権利として認められています。そのため、仮に契約書で賃料減額請求権を放棄するとの特約が記載されていた場合であっても、そのような特約は賃借人の利益を一方的に害するものにあたり、公序良俗に違反し、無効となります。
すなわち、賃借人の賃料減額請求権の行使が妨げられることはありません。
ただし、賃料減額の調停の場で、契約時にそのような特約のある契約を締結したこと自体は、考慮されることにご注意ください。
(9月21日放送)