Q:
私は33歳の女性で、主人とは28歳の時に結婚しました。結婚時は浦和に住んでいました。私はスーパーでパートとして働いていて、主人は浦和にある会社でSEの仕事をしています。
今年に入り、主人が川口支社に転勤になり、川口で家を借りことになりました。普段は、主人が不動産会社とのやり取りもしてくれるのですが、現在、主人の仕事が立て込んでいるため、私が代わりに不動産会社とやり取りすることになりました。
そこで、先日、川口の不動産屋さんに行ったところ、ある物件を勧められました。その日の内に、現地に内覧に行き、気に入ったので入居したいと思い、その旨を伝えたところ、契約の内容について説明され、賃料は月12万円、敷金は30万円といわれましたが、あまりよく理解できませんでした。

そこで、疑問を解消したいので、質問させてください。
①まず、敷金というのは、どういったものなのでしょうか。
②次に、提示された敷金の額が30万円と安くない金額なので、敷金を渡したくないと思っていますが、それは可能でしょうか。
③また、いずれは出ていくことになりますが、その場合には、敷金は返してもらえるのでしょうか。
④さらに、生活が楽ではないので、家賃が払えないときもあると思います。そこで、家賃が払えないときは敷金から充当できるのでしょうか。

A:
それでは、敷金について、ご説明していきます。敷金と呼ばずに、礼金や保証金などと呼んでいることもよくあります。問題となる金銭が敷金かどうかは、呼び方で決まるわけではなく、具体的な性質で判断されることに注意してください。
まず、1つ目の、敷金というのは、どういったものなのでしょうかというご質問からご説明します。


敷金というのは、建物などの借主側が、大家さんに対する債務を担保する目的で大家さんに渡す金銭です。賃貸借契約が終わった際に、借主に契約違反などがない場合には、その敷金全額を返還してもらえるものです。もし契約違反などがある場合には、契約違反などによって大家さんに生じた損失は、敷金から充当されることになります。
簡単にいえば、建物の貸し借りをする場合には、借主が賃料を支払わなかったり、建物を傷つけてしまったりして、大家さんに様々な損害を生じさせる可能性があります。そうすると、大家さんには、借主が発生させる可能性のある損害について、一定の保証を得ておかないと、安心して貸すことができません。そのため、大家さんは、借主が生じさせる可能性のある損害を担保させるため、敷金として、一定の金額を支払ってほしいと要求することができます。これを敷金といいます。


それでは、2つ目の、敷金を渡したくないが、それは可能かというご質問についてご説明します。
これについては、現在、敷金が不要とされるケースはかなり稀です。
敷金が不要とされるような場合は、敷金が不要である代わりに、毎月の家賃が高めに設定されていたり、または、敷金がとれないほど、建物が老朽化していたりなどの特殊事情がある、というような場合のみです。そのため、建物を借りる際に、一切敷金を渡さないと主張することは難しいと思われます。


次に、3つ目の、敷金は返してもらえるのかというご質問についてご説明させていただきます。
敷金は、借主の一切の債務を担保する趣旨で大家さんに渡されるものですので、最終的に返してもらえる敷金の金額が具体的に決まるのは、借主が実際に建物を明け渡した後であると考えられています。これは、借主が建物を明け渡さなければ、最終的に借主が負う債務の範囲も確定しないからです。
そのため、具体的に敷金をいくら返してもらえるかについては、借主にどの程度の未払いの家賃があるかといった事情や、どれだけ建物を汚したかといった事情などの、借主に債務がどのくらい残っているかに左右されるため、今の段階では、一概にはお答えできません。

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最後に、4つ目の、渡している敷金を未払いの家賃に充てることはできるかというご質問についてご説明させていただきます。
これついては、裁判所が、敷金を未払いの家賃に充てることは認められないとの判断をしています。そのため、大家さんに対して、敷金から未払いの家賃に充ててほしいと頼んでも認められないと思われます。

敷金については、法律の専門的な知識が必要になる場合もありますので、敷金をめぐってトラブルになりそうな場合には、法律家などの専門家にご相談していただいた方がよろしかもしれません。

(平成30年2月22日放送)