Q:
私は、半年前に離婚しました。子どもが一人いて、自分が親権者・監護者になっています。
私は、ずっと夫のモラハラに苦しめられていたので、とにかく早く別れたくて、「離婚だけ合意してくれればお金はいいから」と言って、離婚届に判を押してもらいました。半年たって落ち着いてみると、離婚の際に、慰謝料や財産分与、養育費などについて全く決めなかったことを後悔しています。
養育費は子どもが受け取る権利があるものですから、慰謝料や財産分与はともかく、せめて養育費だけでも、元夫に請求したいです。離婚した時に養育費について決めなかった場合でも、後から請求することはできますか?
A:
養育費は、離婚と同時に決めなくてはいけないものではないので、離婚をした後で請求することも可能です。
養育費の請求に、いつまでにしなければならないという期限や時効のようなものはありません。ただし、元ご主人が、過去の養育費についても支払ってくれると言ってくれる場合には、過去の養育費を支払ってもらうことができますが、そうでない場合には、過去の養育費を支払ってもらうことはできません。
また、養育費を支払ってもらえるのは、お子さんが満20歳に達する月までというのが原則なので、注意が必要です。
できるだけ早く請求した方が、それだけ養育費をもらえる期間や金額が多くなります。
Q:
元夫に、「離婚だけ合意してくれればお金はいいから、」と言ってしまったのですが、それでも養育費はもらえるのでしょうか?
A:
養育費は、子どもが自分の親に対して、権利として請求できるものです。親には成人まで子どもを養育する義務があるからです。子どもの権利ですので、親権者であっても親が勝手にいる、いらないと決めることはできません。
そのため、仮に親権者となる一方の親が他方の親に対して、養育費はいらないと言った場合であっても、子どもは養育費を請求することができますし、15歳未満であれば、子どもを代理して親権者が他方の親に対して請求することもできます。
Q:
養育費を請求する場合には、どのようにして請求すればいいのでしょうか?
直接元夫に対して請求しても、支払ってくれない可能性がありそうです・・・。
A:
元ご主人に対して直接請求しても支払ってくれそうにない場合は、裁判所に養育費請求の調停を申立てるという方法があります。
以前にも調停についてお話しさせていただきましたが、調停では、直接元ご主人と同席の上で話し合うのではなく、ご自分の主張を調停委員に伝えて、それを調停委員から相手に伝えてもらうという方法で話し合いを行いますので、ご相談者のお気持ち的にも、お話し合いがしやすくなると思います。
調停が成立すれば、調停の内容、つまり養育費の金額や支払い方法などについて書かれた調停調書を作成してもらえます。調停調書には、判決と同じ効力がありますので、もし、養育費を支払ってもらえない場合には、相手方の財産を差し押さえ、強制的に支払わせることができます。養育費の場合、給料の差押えも許されるので、会社勤めで給料をもらっているのであれば、確実に養育費の支払いが見込めます。
ただ、調停は、あくまでも裁判所で行うお話し合いなので、相手と合意できない場合には、調停を成立させることはできません。調停が不成立になった場合には、審判という手続きに移行します。審判では、裁判官が、両親の収入や子供の年齢、成育環境等の事情が勘案して、養育費の金額を決めることになります。
調停や審判になった場合でも、相手が合意しない限り、過去の養育費の支払いは認められません。調停を申し立てた月から支払われることになりますので、養育費を請求する調停を申し立てる場合には、お早めに申し立てた方がよろしいと思います。
調停の申立てはご自分でもできますが、もしご自分でするのがご不安な場合には、わたくしどものような専門家にご相談いただければと思います。
(平成30年1月4日放送)