Q:
私は70代の男性です。妻に先立たれてから、愛犬と一緒に暮らしています。
愛犬はまだ1歳で、自分より長生きしそうなくらい元気です。そこで、自分に何かあった場合の愛犬のことが心配になりました。
妻も子供のようにかわいがっていた愛犬なので、自分が死んだ後は、自分の財産を全部愛犬に遺してやりたいと思っています。
自分が死んだ後の財産を愛犬に遺すことはできるのでしょうか?
A:
お子さん同然にかわいがっておられるのであれば、愛犬に財産を遺したいというのももっともなお気持ちだと思います。海外では、実際に、資産家が愛犬に全財産を譲るということがあるというお話も聞きます。
しかし、日本の法律では、ペットはあくまで「物」として扱われます。
飼い主にとってペットは家族の一員であっても、法律上は「物」であるペットに、飼い主が財産を遺したり、ペットが財産を受け取ったりすることはできません。
財産を相続できるのは、あくまで「人」だけになります。
そのため、全財産を愛犬に譲るというのは、日本の法律では認められていないのです。
Q:
自分には子どももいないので、自分に何かあったら愛犬がどうなるか心配です。
せめて信用できる人に愛犬を託せれば安心できるのですが、法律的に何か良い方法はあるのでしょうか?
A:
飼い主の方がペットに財産を遺したいというのは、ご自分が死んだ後にペットがきちんと世話を受けられるか心配なお気持ちもあると思います。
そこで、ペットの世話をしてくれる人を探し、その人にペットの世話をしてもらう代わりに、財産を譲ることが考えられます。ペットの世話をする条件で財産を譲るということです。
その際には、は2つの方法が考えられます。
1つ目の方法は、ご自分が死んだら、愛犬の面倒を見てもらう代わりに、その人に財産を譲るという遺言書を作成しておくという方法です(負担付遺贈)。
遺言書は、ご自分で作成することもできますが、公正証書にしておけば面倒な手続きである「検認」をしなくてすみますのでお勧めです。
さらに、遺言の内容をまちがいなく実現する役目である遺言執行者を決めておけばさらに安心できます。
ただし、財産を譲る相手が拒否し、相続を放棄した場合には、愛犬の面倒を見る人がいなくなってしまうというデメリットがあります。
2つ目の方法は、ご自分が死んだら愛犬の面倒を見てくれることを条件に財産を贈与するという契約(条件付き死因贈与)を結ぶことです。
ご自分が死亡すれば財産を贈与することになるので、ほぼ遺言と変わらないのですが、契約なので、相手との合意で成立するため、あらかじめ相手の意思を確認しておくことができて安心です。贈与契約についても、公正証書にしておいた方がより安心です。
しかし、相手が犬の面倒を見るのはいやだ、といえば成立しないというデメリットもあります。
遺言にも死因贈与にはそれぞれメリット、デメリットがあるので、ご自分に合った方法をご検討された方がよろしいと思います。
もし、公正証書の作成や遺言執行者の指名についてわからないことがあるようでしたら、わたくしどものような専門家にお気軽にご相談ください。
(8月31日放送)