Q:
実家の母は76歳になりますが、最近、頻繁に物忘れをします。出かけた先で財布を忘れてきたり、押し売りに何時間も居座られたりしているようです。
振り込む直前で、近所に住む弟に止められ、未然に防止できましたが、オレオレ詐欺に引っかかりそうにもなりました。
先日は、高額な商品をセールスの人から購入してしまい、すぐにクレームを言って代金を支払わずに済みましたが、今後もこのようなことが続くと困ってしまいます。
母を悪質なセールスや詐欺から守るための何か良い方法はないでしょうか?
A:
悪質なセールスに対処するには、二つほど方法があり、一つは消費者契約法に基づいて契約を取り消す、あるいは特定商取引法に基づきクーリングオフをする方法です。
もう一つはさらに根本的な解決方法として、成年後見制度あるいは任意後見制度を利用することです。
詳細は割愛しますが、一つ目の個別の契約取消しという方法では、お母さまが契約をするたびに取消しをする必要があり、煩雑になってしまいます。
また、業者が任意に応じなければ、裁判まで行って、契約の取り消しを認めてもらわなくてはならないので、実際には色々と困難です。
そこで、今回は二つ目の方法に絞ってご説明します。
判断能力が低下した、もしくは今後低下する可能性が高い高齢者に対して、よく利用されているのが、成年後見、あるいは任意後見という制度です。
成年後見は、ご本人が判断能力を欠くようになった後で、親族等が家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が成年後見人をつけるものです。
これに対し、任意後見は、ご本人の判断能力が十分な時期にあらかじめ公正証書で契約をしておき、ご本人の判断能力が低下し、判断能力を欠くようになった段階で、任意後見が開始するというものです。
成年後見あるいは任意後見が開始すると、ご本人が単独では、有効に高額な商品などの取引ができなくなりますが、相手方がご本人の判断能力に疑問をもったか否かにかかわらず、事後的に契約の無効を主張することが可能になります。
その結果、悪質なセールスによって、お母さまが高額な商品を買わされたとしても、契約の無効を主張できるので、代金を支払う必要はなくなります。
家庭裁判所から成年後見人に選任されるのは、親族である場合もありますが、財産管理の事務作業が大変であることや法律上の判断が求められることもあるので、、第三者である弁護士などが選任されることが一般的です。
認知症などで判断能力が相当低下しており、ご本人一人で高額な契約をさせてしまうことに不安がある方や、悪質なセールスにだまされる可能性がある親御さんがいる方は、成年後見制度や任意後見制度を利用されることも、一つの方法として覚えておかれるとよいと思います。
なお、一時期は成年後見人である弁護士の不祥事があったこともあり、成年後見制度への不信感が高まった時期もありました。
しかし、現在では、そうした不祥事に対して、後見人の横領に対する重罰化や後見監督人による監督などの対応策がとられていますので、これらの制度を利用することについて心配される必要はありません。
さらに、近年に至り、1000万円以上の財産がある場合には、信託をすることになります。これを成年後見支援信託といいます。
信託された財産については、弁護士が処分できるわけではありませんので、弁護士の横領や使い込みは現実的に不可能になります。
そのため、財産が多い場合にも心配される必要はありません。
もし成年後見の申立てなどをお考えの場合には、お気軽にわたくしどものような専門家にご相談いただければと思います。
(7月27日放送)