Q:
1年ほど前に、ペットショップで血統書つきの子犬を15万円くらいで購入しました。子犬の犬種はプードルで、病気にかかりやすいということは知っていましたが、店員にその心配を告げたところ、「体調管理は厳格に行っています。病気になることはありません」と断言されたので、安心して買うことにしました。
2か月ほどは何事もなかったのですが、その後、病気(フォンビルブランド病)になってしまいました。
そこで、購入したペットショップに行ってクレームを伝え、対処をお願いしたところ、「飼い方に問題があったのではないですか」と言われ、まともにとりあってもらえません。また、「約款にも、ペットショップが責任を負わないことは明確に記載してあり、それに同意していますよね」とも言われました。
約款の内容を十分見なかったのは私の手落ちですが、私の飼い方自体に問題があったとは到底思えません。このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか?

A:
まず、法律上、売買の目的物が、特定物か不特定物かによって、取扱が変わってきます。
プードルといった「犬種」に着目する場合には、不特定物となり、一方で、店頭に展示されている子犬の「個性そのもの」に着目する場合には特定物とするのが法律上の建付けです。通常は、店頭で実際にケージ内の子犬を見て、その子犬を気に入ったうえで購入することがほとんどだと思いますので、子犬が個性に着目した特定物であることを前提としてご説明します。
子犬が特定物であること前提とすると、売買時にペットショップが販売する子犬の病気について知っていれば、健康な子犬を渡す義務に違反しているとして、債務不履行責任に基づいて損害賠償請求(民法415条)や、契約の解除(民法541条)が可能です。具体的には、損害賠償請求としては、子犬が病気になったことでかかった病院の治療費などを請求することになります。一方で、契約の解除による場合は、子犬をペットショップに返還する代わりに、代金を返してもらうことになります。
売買時にペットショップが子犬の病気について知らなかったのであれば、ペットショップとしては、その犬を引き渡せば本来すべき義務の履行はすべて終わっており、債務不履行はないことになります。こうした場合には、瑕疵担保責任という制度に基づき、さきほどと同様に損害賠償請求、または契約の解除といった主張をすることが考えられます。
これらは法的に認められた権利ですが、お店側がこうした権利主張に任意に応じなければ、最終的には裁判によって請求せざるをえない状況になります。ご自身で訴訟をすることもできますが、その場合は、専門家に依頼されたほうがよろしいでしょう。

また、子犬の売買の契約書に損害賠償や解除以外の解決方法が定められていれば、他の解決方法が認められる余地もあります。
なお、契約書にペットショップ側が子犬の病気や死亡について一切責任を負わないとの定めがあったとしても、消費者に一方的に不利な条項は無効とするのが法律上の扱いです。消費者契約法8条1項1号の「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項」にあたれば、無効となります。
ただし、契約書の条項が実際にこれにあたるかどうかは、条項の具体的内容によるので弁護士等の専門家にご相談ください。

(7月13日放送)