Q:
私は50代の専業主婦です。夫は来年、定年退職の予定です。
これまでに離婚しようと思ったことは何回もありましたが、子どもが独立するまでは・・・と思って、ずっと我慢してきました。昨年、ようやく娘も結婚して落ち着いたので、真剣に離婚を考えています。
①離婚となった場合、夫の退職金も財産分与の対象になるのでしょうか?
②また、すでにローンが完済している分譲マンションに住んでいるのですが、財産分与として、今住んでいる夫名義のマンションをもらうことはできるのでしょうか?
A:
今回は、一般的に言われている「熟年離婚」についてのご相談ですね。熟年離婚の場合には、財産分与が問題になることが多いです。
まず、1つ目のご質問の、退職金も財産分与の対象になるのかという点についてご説明させていただきます。
以前にも財産分与についてお話させていただいたことがありましたが、ご夫婦が結婚してから別居するまでの間に築いた財産は、名義にかかわらずご夫婦の共有財産となりますので、財産分与の対象になります。例えば、ご夫婦の預貯金や不動産、生命保険、車などです。すでにご主人に退職金が支給されている場合には、退職金も財産分与の対象になります。
しかし、まだ退職金が支給されていない場合には、ご主人の勤務先の経営状態やご主人の退職時期などの不確定な要素によって、実際に退職金が支給されるかが左右されますので、財産分与の対象になるかについては個々のご事情によって変わってきます。退職金が支給される時期が迫っていて、支給される可能性が高い方が、財産分与の対象になる可能性が高くなります。
まだ退職金が支給されていない段階で、退職金を財産分与の対象とする場合には、財産分与の対象とする金額をどのように算出するかについてもいくつかの考え方があります。①離婚時点で任意に退職すれば支給されるであろう退職金の額を財産分与の対象とするという考え方、②将来支給されることを条件として財産分与の対象とするという考え方、③将来の退職金の額自体を現時点で財産分与の対象とするという考え方などがあります。
Q:
そうすると、退職金が支給された直後か、退職金が支給される直前が、離婚のチャンスということでしょうか?
A:
そうですね。財産分与の観点から考えると、退職金が支給された直後か、退職金が支給される直前の方が、財産分与の対象となる財産が増える可能性がありますので、そのように言えるかもしれませんね。
次に、2つ目の、財産分与として、今住んでいるご主人名義のマンションをもらうことはできるのかという点についてご説明させていただきます。
一般的に、財産分与の金額は、マンションの評価額やその他の財産分与の対象となる共有財産の合計額の2分の1の金額になります。つまり、共有財産の合計額の半分を財産分与としてもらえるということになります。
例えば、マンションの評価額が3000万円で、その他の共有財産が5000万円あった場合には、財産分与としてもらえる金額は、3000万円と5000万円を足した8000万円の半分である4000万円となります。財産分与は、金額で考えるのが原則ですので、当然にマンションがもらえるというわけではありません。
しかし、ご夫婦の間で、マンションについては、ご相談者のものにしてもよいという合意ができる場合には、財産分与としてマンションをもらうことができます。
もし財産分与としてマンションをもらうことになった場合には、離婚後、マンションについての所有権移転登記をする必要があります。つまり、登記の名義を、ご主人からご相談者に変える必要があります。
法務局に、登記の名義変更の申請をする必要がありますが、その際には、ご相談者が財産分与としてマンションをもらったことがわかる書面が必要なります。この書面とは、離婚協議書や裁判所で調停が成立した場合に作ってもらえる調停調書という書面などです。マンションをもらうという口約束だけでは、最終的に登記の名義変更手続きができないので、注意が必要です。
ご不明な点がありましたら、わたくしどものような専門家にお気軽にご相談いただければと思います。
(平成30年1月18日放送)